無茶星の人

だれから聞いたのか、今年は36年に一度の寅年とのこと。

九星の魔法陣の中央にあって、ほかの星より強い力をもつらしい五黄が、十二支のなかでも猛々しい生き物である寅とめぐり合わせると、なにやら激しい運気を生みだすらしい。今年はそういう年だそうである。

毎年、年男年女にあたる歴史上の人物を調べてみるのがちょっとした愉しみということもあるが、五黄の寅なる珍しい年の生まれとなるとなおさら興味深い。36年ごとにさかのぼってあれこれ見てみると、あんな人こんな人、とうぜんいろんな人物がいて、近いところではレディー・ガガもどうやらそうらしいとか、よく考えたらうちの父親もそうだったとか(道理で妙な野生味があるのか)、などと気づかされる。

五黄の寅年生まれで、それを終生気に入っていたのが、陶芸家の川喜田半泥子だったというのは、彼のエッセイで知った。「半ば泥みて半ば泥まず」という意の号のほか、いくつもある別号やペンネームのなかに「無茶法師」というのがあって、知人に五黄の寅は「無茶星」だと言われたのを茶化して自ら名乗ったらしい。

半泥子は寅(虎)にかかわる美術品も多く集めていて、あれだけの審美眼と財力をもっていただけに逸品ぞろいとなっている。ちょうどいま三重の石水博物館で、それら半泥子のコレクションや自作品の展覧会が開かれていて、まじかに観ることができる。

ところで自作のものに「とら大臣」と銘打った井戸手茶碗があるのだが、やはりこれはかつて国会で大トラになった大蔵大臣のことを茶化して名付けたものなのか。政治の世界にも身を置いた半泥子としては格好のネタだったのだろうと思う。

半泥子の遊び心をほほえましく感じながら、五黄の寅年生まれの探索を続けていると、ジョージア・ゴリ生まれの「鉄人」にいきあたって、少しびっくり。

コメント

タイトルとURLをコピーしました